箱根湯本温泉のおすすめの宿ランキング

箱根湯本温泉

箱根湯本温泉に宿泊するならこの宿！

萬翠楼 福住

萬翠楼 福住

湯坂山の麓、標高100mほどの早川～須雲川沿いに広がる箱根湯本温泉は、箱根の玄関口であり、箱根温泉の中心的存在でもある。最寄り駅である箱根湯本駅には、小田急ロマンスカーをはじめ箱根登山鉄道や箱根登山バスなどの交通機関が集まっており、連日観光拠点としての賑わいを見せている。

また奈良時代の天平年間に発見された箱根七湯最古の湯であり、北条早雲ゆかりの早雲寺や正眼寺などの古刹や名所旧跡などが温泉地に点在している。

そんな歴史ある温泉地にある、箱根屈指の老舗旅館が『萬翠楼 福住』だ。

2018年に放送されたNHKの『ブラタモリ』でも、箱根温泉発祥地近くにあるこの宿が登場したが、創業は江戸時代の1625年と3代将軍家光の時代で、『東海道五十三次』で知られる歌川広重をはじめ、徳川慶喜・西郷隆盛・山内容堂・木戸孝允・井上馨・伊藤博文・三条実美・山縣有朋・福沢諭吉・志賀直哉…と、幕末の志士から政財界の要人・文人墨客まで、数多くの偉人たちが、この宿を訪れている。

ちなみに『萬翠楼』という宿名は1876年に木戸孝允が滞在した折に命名したらしい。

なんと言っても『萬翠楼 福住』の魅力は、そんな歴史ある宿であることを物語る、明治期の1879年に建てられた旧館の建物だ。

10代目となる福住正兄の時に建てられた明治棟「萬翠楼」「金泉楼」は、西洋建築と数寄屋造が融合した三層の擬洋風建築で、派手さはないが細かな意匠に匠の技が光る素晴らしい建築物となっている。

2002年に、営業中の旅館として日本で初めて国の重要文化財に指定されていて、この建物見たさにこの宿を訪れる人も少なくない訳で、そういう私も国道138号を走りながら旭橋手前でちらりと見えるその姿に、以前より惹かれていた一人である。

内部の螺旋階段や建具・設えが興味深く、書院や床の間の書や掛軸、戸袋の絵、欄間や明かり窓・障子の桟、襖の引手など、ついつい細かい所にまで目が行ってしまう。

そしてこの宿を語るうえで欠かせないのが、明治棟「萬翠楼」の15号室で、まるで銀行の金庫に入るかのような重厚な扉の向こうに、偉人たちが泊った部屋がある。

踏み込みから素晴らしく、富士山や花鳥風月などを題材とした48枚の天井画を見上げては、ハァ～と首が痛くなるまで見上げてしまう。

現在は原則15号室は宿泊利用していないため、滞在中に見学できる…、というか『萬翠楼 福住』自体が歴史博物館のようなものなので、滞在中は食事や温泉だけでなく館内を巡る楽しみがある。

その温泉はというと、通常は露天風呂が魅力となる宿が多いが、ここでは露天風呂よりもレトロモダンな『テルマエ・ロマエ』に登場しそうな内湯が魅力だ。

客室のお風呂の他に、二宮尊徳の「すべてのものは互いに働き合い、一体となって結果が出る」という教えより名付けられた「一円の湯」や「扇の湯」がある。

前述の10代目の福住正兄が二宮尊徳の門下生で、自らも報徳思想や報徳仕法の実践者だったことから名付けられたようだ。

至る所にその歴史があり魅力が尽きない『萬翠楼 福住』だが、子供連れには向かない宿であり、また若い方にはなかなか興味が向かずおすすめしにくい宿だ。だが建築や歴史が好きな方や、時間にゆとりのある大人の方々には、至極の時が過ごせる宿となっていることだろう。

最近、ここの珈琲が美味しいと評判のようだ。ロビーの一角に書架もあるので、是非本を広げ珈琲でも飲みながら、この宿の歴史の重みを感じて欲しい…

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