松崎温泉のおすすめの宿ランキング

松崎温泉

松崎温泉に宿泊するならこの宿！

御宿しんしま

御宿しんしま

松崎町 で温泉というと、民宿天国の 雲見温泉 や泉質自慢の 桜田温泉 の名が挙がり、当の松崎温泉は…と問われれば、温泉そのものにはそれほど特徴的なものは無く印象が薄いというのが、一般的な見解ではなかろうか。

現に温泉が湧いたのは、昭和時代の1963年と歴史は浅く、松崎2号･6号･12号･13号による混合泉が一般的なのだが、pH8.8の低張性･アルカリ性･高温泉のカルシウム･ナトリウム－硫酸塩泉は、無色透明でまろやかな肌触りのメタケイ酸を59.9mg/kg含む美肌効果もそこそこ期待できるお湯ながら、名湯揃いの西伊豆にあっては標準的なお湯であり、埋もれた印象は否めない。

だがそんな松崎温泉だが、松崎の町はというと "花とロマンの里" を掲げ、伝統的な "なまこ壁" と "漆喰鏝絵" で知られる伊豆半島随一の独自の芸術文化が栄えた、どこか懐かしくそれでいて特異な印象を受ける湯まちとなっている。

私個人としても、かれこれ20年近く「伊豆で一番好きな町は？」と問われれば、迷わず「松崎町！」と答えてきたほど大好きな町であり、特に 田んぼをつかった花畑 と 那賀川の桜並木 のコラボが美しい3月下旬～4月上旬にかけての松崎は最高であり、大人の旅にはぴったりの、のんびりとした時の流れが感じられる風情豊かな町並みとなっている。

実は余り知られていないのだが、あの世界的に有名な世界遺産のサグラダ・ファミリアの主任彫刻家で、今やガウディ建築の一番の理解者として陣頭指揮にあたっている外尾悦郎さんが、4カ月間一時帰国し制作した貴重な作品がココ松崎にある。

若い世代の人は知らないだろうが、♪ダバダ～の曲に乗せて「親愛なるガウディさま、珈琲が旨い時代になりましたよ！」のセリフが流れるあのネスカフェのCMに登場していた人物が、外尾悦郎さんだ。

国内では希少で数作しかなく、その内の『ナシミエント』と『老人と子供』という2点が、伊豆の長八美術館 と カサ・エストレリータ にある。

石山ワールドの奇抜な建築物や歴史的建造物が多い松崎の町にあっては見逃されやすいが、あの世界が認めた外尾悦郎さんの作品が国内で見られるのだから凄いことである。

また駿河湾に沈む夕陽とのどかな田園風景が続く町並みは、映画やドラマのロケ地としても有名であり、山田孝之さんと綾瀬はるかさんが主演した大ヒットドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』では、その自然美あふれる景観の美しさが話題となり、ロケ地巡りで今もセカチューファンが押し寄せる。

温泉を楽しみつつ、ドラマのロケ地を巡る旅が楽しめるのも、この松崎温泉の魅力である。

そんな松崎温泉でおすすめしたい宿は、窓を開けると心地良い波音が聞こえ、最上階の展望風呂や大浴場からは駿河湾が一望でき、松崎の夕陽も見られ、しかも公共の宿でコスパも最高！…という、万人受けして総合評価も高い「伊豆まつざき荘」を、当初考えていた。

だが、伊豆で異色の文化が育まれた松崎らしい宿か？と問われると、一般的で松崎でなくとも泊まれる宿という印象は否めないわけで、ここは目に付く点や人によっては価値観が合わない人もいるだろうが、あえて『御宿しんしま』をおすすめしたい。それは私が知る限り最も松崎らしい湯宿だからだ。

ただし子供連れやグループ旅行などで訪れるのなら、迷わず「伊豆まつざき荘」をおすすめする。『御宿しんしま』は、大海原も沈みゆく夕陽も見えず、宿泊者を選ぶ大人の湯宿だからだ。

そんな『御宿しんしま』は、全国でも珍しい漆喰鏝絵が描かれた ときわ大橋 から続く、那賀川沿いの "しんしまの小径" 沿いにある。松崎を語る上で外せないこの漆喰鏝絵は、地元が生んだ名工 伊豆の長八こと入江長八に由来する松崎が誇る芸術文化で、鏝で立体的な彫刻を施したものなのだが、その緻密な装飾画は見る者を圧倒する。

詳しくは 伊豆の長八美術館 や 長八記念館 を訪れて体感して頂ければと思うのだが、そんな入江長八が手がけた漆喰鏝絵が残る蔵があるのが、この『御宿しんしま』だ。

明治時代の1880年の作で、同時期に制作された国の重要文化財となっている 岩科学校 と同じ技法が見られる貴重なもので、蔵に描かれていたため、わざわざ敷地内にあった蔵を移築し「長八の蔵」としてロビーへと組み込んでいる。宿泊者のみへの公開となっているため、これだけでも『御宿しんしま』へ泊まる価値があるというものだ。

そして高い天井と窓にはステンドグラス、そこに半個室タイプの席という「ダイニング長八の蔵」では、料理長自慢の逸品が味わえるのだが、ふと見上げながら柳川でせいろ蒸しを食べた福柳というお店の奥にある蔵を改装した "南風のまほら館" を思い出した。

南風のまほら館は、同じ蔵利用ながらもっと暖色系で温かみのある感じなので、こことは対照的で大分印象は異なるのだが、スッキリして開放的とも言える「ダイニング長八の蔵」の造りは、目の前の料理とは裏腹にどこか味気なさを感じ、もう一工夫欲しい気がした。

住宅業界では、よくただ高いだけの吹き抜けは間抜けと言われるが、空間的なアンバランスがあり、下部に対する上部の抜けが度が過ぎていて逆に落ち着きをなくしている感じで、例えるなら広すぎるトイレといった感じだろうか。

一般的な蔵利用では、わざと木組を見せる演出が多い中、梁もペンダントライトも何もなく、上部空間が全体的に白一色というのがかえって空白を生んでおり、間延びしたような味気無さが感じられる。

白一色でも 山口ザビエル記念聖堂 のように、ステンドグラスが天井まで伸び光の演出があれば収まりも良いのだが、もう一工夫欲しい空間演出だなぁ～などと思ったりもしたが、これは個人的な見解なので、皆さんはどう感じるのか訪れて確かめてみて欲しい。

一方、湯処はというと、趣の異なる湯舟にて源泉100％かけ流しの湯浴みが楽しめる。青みがかった伊豆石が美しい程よい広さの男女別々の内湯と、予約制で「桜の湯」「たちばなの湯」という2つの貸切露天風呂が楽しめる。

2食付きプランならば無料で利用でき、「桜の湯」は松崎の特産品で生産量日本一を誇る桜葉を塩漬けにする大樽と同じ大きさのわっぱを使用した湯舟となり、「たちばなの湯」は味わいの異なる石が大胆に配された岩風呂となっている。またこれとは別に家族風呂もあり、これは空いていれば鍵をかけて自由に湯浴みが楽しめる。

とまぁ、海辺のホテルには無い特色を書いてきたが、独自の文化を育んできた特異な歴史を持つ松崎の町にあって、想い出や記憶に残る宿として『御宿しんしま』は間違いなくおすすめできる宿であり、私が知る限り最も松崎らしい湯宿に思える。

前述したように、子供連れやグループ旅行などで訪れるなら、迷わず「伊豆まつざき荘」をおすすめするのだが、大人の旅には趣のある『御宿しんしま』が最適だと思う。

多少冒険しなければいけない所はあるものの、私は松崎の町で泊まるなら『御宿しんしま』をおすすめしたい。

そして朝の散歩や湯上り時にちょっと裏木戸を出れば、そこには川が流れ、川沿いにはなまこ壁が続き、川向うにはあの ロマンチックな 時計塔 や火の見櫓が見える。

『御宿しんしま』でちょっぴり松崎らしさを感じたならば、是非その続きを風情のあるこの小径を歩きながら膨らませて頂きたい。

ひとつアドバイスをするとしたら、宿の周辺にはセカチューのロケ地が目白押しとなっており、散歩をすればココもそうか、あの建物も…と、ドラマで登場した建物や風景があちこちで見られる。

セカチューファンならずとも、ここはドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』を見て松崎の風景を目に焼き付けてから訪れて欲しい。きっと何倍も松崎の町が楽しめることだろう。

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