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北川温泉

北川温泉に宿泊するならこの宿！

望水

望水

伊豆半島の東海岸の海沿いを行く国道135号沿いに、ボーっと海を眺めながらクルマを走らせていると、思わず通り過ぎてしまいそうなくらいの温泉地がある。それが北川温泉だ。

北川温泉と書いて「ほっかわおんせん」と読むのだが、Googleでも「北川温泉 読み方」と検索する人が多いようで、知らない人はほぼ100％「きたがわおんせん」と読む。

そんな北川温泉には、小エリアながら相模灘を一望する名旅館が建ち並んでおり、その中でも長らくトップに君臨しているのが、ここ『望水』だ。

観光協会の話によると昭和の初めに、北川一の素潜り名人と言われた鳥沢惣太郎が、漁の時に港近くの岸から10m程の崖下の海底で、常に一つだけ海藻に覆われていない不思議な岩を発見し、もしや…と思いボーリングを行うと、約115m程掘削した所より、90℃という高温の温泉が湧き出たという。

これが北川温泉のルーツとなるのだが、浜辺に「黒根岩風呂」の先駆けとなる野天風呂が造られたものの近隣住人が使う程度で、観光資源という感じではなかった。

やがて1933年7月に伊東～下田間に東海岸道路が開通し、1938年12月15日には伊東駅が開業するも、東海バスは走るようにはなったが、まだまだ旅行客が訪れるまでには至らず、戦前・戦後と温泉地としては長らく未開のままだった。

1934年11月に熱海で「つるや旅館」を開業していた衆議院議員の畠山鶴吉が、1957年初頭に現在の「つるや吉祥亭」の前身となる「北川温泉 つるや旅館」を開業し、そこから温泉地としての開発が進むと、伊東からバスで50分（現在は30分）ということもあり、温暖な気候とそのロケーション・温泉・伊豆の海の恵みが都会の人々の心をつかみ、徐々に旅行客が増えていった。

そして1961年に伊豆急行が下田まで開通し、1964年10月1日に「伊豆北川駅」が開設されると、一気に伊豆の温泉地へと仲間入りするまでとなった。

そんな北川温泉と言えば、日本百名月にも認定されているムーンロードが有名なのだが、この宿の前にある北川築城石公園の海際の堤防から眺めるよりも、この『望水』の客室や露天風呂から望む月の方が遥かに美しく、高さがあることから海との一体感が半端ない。

満月の日に水平線より出づる月の光景は言葉を失うもので、月の道も月明かりでキラキラと輝く海面も、すべてが神秘的で物語の世界へと誘われる。時を忘れて眺めていられるもので、こと湯舟からボーっと眺める満月は最高だ。

秋の夜長にこんな湯浴みが楽しめたなら、温泉冥利!?に尽きるわけで、再びこの『望水』の湯舟に浸かりたくなるのもうなづける。

そんな北川温泉のお湯は、弱アルカリ性で低張性・高温泉のナトリウム・カルシウム - 塩化物泉なのだが、美肌の湯の要素であるメタケイ酸を120mg～130mgくらい含んでいる。ただ高温がゆえに加水している場合が多く、また全てがかけ流しというわけではないのが少々残念だ。

ちなみに北川築城石公園は、江戸城の石垣づくりのために切り出された築城石をシンボルとした公園で、伊豆半島にはこうした公園や石切場・石丁場跡がいくつもある。3トンから14～5トン位の石が、デカすぎて運べなかったのか、形が悪かったのか、割れなかったのか理由は様々だろうが、船で運ばれずに残されているわけで、海岸にも普通に矢穴や刻印が刻まれた石があったりする。

石垣に興味がある人は、築城石巡りだけで伊豆半島を一周できるので、是非チャレンジしてみて欲しい。

東伊豆町で温泉と言うと、どうしても熱川温泉や稲取温泉が有名なことから少々影が薄い北川温泉だが、宿のレベルは熱川温泉や稲取温泉に全く引けを取らない素晴らしいもので、その中でも『望水』は特に素晴らしい。

是非、満月の日をチェックしてから訪れてみて欲しい！

最後に、元祖北川温泉とも言える「黒根岩風呂」には、是非とも立ち寄って欲しい。大型台風の度に修復されながら現在に至っている名物露天風呂で、NIKKEIプラス1の『大自然につかる絶景温泉10選』にも選ばれている。

昔は混浴露天風呂だったのだが、現在は手前2つが男性用、一番奥が女性用と完全に分かれてしまったようで、昔風情が薄れてしまって少々残念!?…と思う反面、これも時代の流れということで、逆に利用しやすくなったとも言える。

宿の露天風呂とは全く趣の異なる湯浴みが体験できるので、是非足を伸ばして欲しい。

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