熱川温泉のおすすめの宿ランキング

熱川温泉

熱川温泉に宿泊するならこの宿！

奈良偲の里 玉翠

奈良偲の里 玉翠

熱海から国道135号を南下していくと、熱川温泉辺りから一気に南国ムードが漂いだす。眼前には青い海と白いビーチが広がり、夏には海水浴場として賑わうビーチリゾート、それが熱川温泉だ。

そんな美しいビーチを抱える温泉街のあちこちで、もくもくと湯煙が立ち昇る光景が見られる。伊豆急行線で訪れれば、伊豆熱川駅に降り立ちすぐに湯煙を吐く温泉櫓が目に飛び込んでくることだろう。

意外に思うかもしれないが、熱川温泉には実に13基もの温泉櫓が建っており、温泉地に占める温泉櫓の密度では "日本一" となっている。そしてその湯煙を立てる源泉のほとんどがほぼ100℃の高温泉で、中には105℃という源泉もあり、まさに太田道灌が名付けた "熱川" という名に相応しい温泉地となっている。

だが驚くのはまだ早い。

泉質は海沿いの温泉地らしく「ナトリウム－塩化物･硫酸塩泉」で、pH8.5前後の源泉がほとんどなのだが、伊豆では珍しくメタケイ酸を200mg/kg以上、メタホウ酸を20mg/kg以上とかなりの量を含んでおり、所謂「美人の湯」となっているのだ。

とかく高温泉ばかりに注目が集まる熱川温泉なのだが、実は伊豆随一と言っても過言ではない数値を誇る「美人の湯」なのだ。

とまぁ、熱川温泉は魅力溢れる泉質を誇る温泉地なのだが、そんな熱川温泉でおすすめしたい宿は、青い海、白い砂浜、そして湯煙がたちこめる温泉情緒あふれる南国リゾートでは無い!?、奥熱川という高台の竹林の中に佇む『奈良偲の里 玉翠（ならしののさと ぎょくすい）』だ。

熱川温泉と言えば、「熱川YOU湯ビーチ」沿いに林立するリゾートホテルをイメージする方が多いと思うが、およそ熱川温泉のイメージからは一番遠い所に位置すると言ってもよい、手つかずの自然と四季の移ろいが感じられる里山の温泉宿だ。

聞けば宿が建つ奈良本という地名は、奈良時代に都落ちした貴族が都に思いを馳せながら暮らしていた所だといい、いつかは奈良に…と奈良の都を偲ぶ貴族たちの思いが、この宿名に表れているという。

正直、ここで紹介する宿として、これぞ熱川！というど真ん中を行く「粋光」と、どちらをおすすめしようか迷ったが、純粋に温泉地ではなく温泉宿を楽しむという点において、この宿を選んだ。

先に述べておくが、熱川温泉のビーチリゾートを満喫したいという方には、迷わず「粋光」をおすすめする。特に若い世代には、こちらの宿の方がトキメキ感が高いだろう。

『奈良偲の里 玉翠』は、奥熱川というその立地からも落ち着いた時の流れがあり、外的要因よりも、体の内から湧いてくる満足感や幸福度が高い宿と言える。

言葉で表すと、"楽しみ" と "愉しみ" の違いとでも言えようか・・・。

そんな "大人の愉しみ" が感じられる宿には、それなりの理由がある。

以前、配管が寒さで破裂し源泉の供給がストップしたことがあった。その際『奈良偲の里 玉翠』はすべてのお客様に一件一件丁寧に連絡をとり、自腹にて宿泊費を負担し近隣の宿への振替えを行ったという。

緊急対応として水道水を沸かしたり、ろ過して温泉を再利用したりして一時しのぎをする宿も見受けられる中、実に嘘偽りのない誠実な対応であり、ここにこの宿のお客様に対する心、おもてなしの粋が垣間見える。

熱川温泉のリピーターならともかく初めてという方なら、ただのお湯であっても気づかない方もいるだろう。またろ過された温泉の鮮度の違いに気付く方は尚更少ないだろう。現に温泉成分が少なくただ25℃以上あるだけの単純温泉の中には、そうしたお湯も散見される。

だが宿のファンをつくり育むということは、常に誠実であり一瞬たりとも手を抜くことは許されない。

湯宿として100％の館内の状態を維持し、湯宿として100％の湯舟を用意してはじめてお客様と真剣に向き合え温泉旅館としてお迎えできるわけで、そこに「とりあへず」とか「今日だけは…」などという甘えや妥協はない。

誠実に向き合い一切妥協しないこの宿の根底に流れる精神があるからこそ、現在に至るまで多くのリピーターに支えられ、熱川温泉屈指の宿としてその名を留めているのだろう。

実は奥熱川と言われる高台の『奈良偲の里 玉翠』の自家源泉は、海沿いの熱川温泉に比べて源泉そのものの泉質はやや魅力に欠ける。現在はpH7.7の弱アルカリ性となっているが、温泉分析の年度によっては7.5未満となり中性となる年もある。

だが温泉は生き物だ。それだけでお湯の良し悪しが決まる訳ではない。

海沿いの多くの宿が、100℃近い高温泉ゆえに加水しているのに対して、約98℃の自家源泉を持つ『奈良偲の里 玉翠』は、湯守を置き季節や天候による変化に細やかに対応し、毎日毎日一番お客様が心地良いと思える温度にお湯を整え湯舟へと注いでいるのだ。

この仕事は簡単なことではない。人の感覚というものは難しく、ただ温度計で42℃にすればよいというものではなく、外気と自らの手の感覚を頼りにこまめな調節を行うという経験がものを言う仕事だ。

温泉は加温はともかく加水すれば、その瞬間 "源泉かけ流し" ではなくなる。それは "温泉かけ流し" であり、せっかくの豊富な温泉成分を薄めていることになる。夏場ともなれば温度調整のために、もはや源泉の効能を語ることが出来ないレベルにまで薄められているかもしれない。

薄めても尚成分豊富で、他の温泉地よりも魅力あるお湯と言えるのが熱川温泉ではあるのだが、薄めないに越したことはなく、だから薄めて良いとしないところに "本物" は宿るのである。

もちろん温泉の効能は、湯舟のつくりや立地からくる転地効果など泉質がすべてではない訳だが、お湯をつくり整えるという非効率で採算性が悪く、決して日の当たらない部分に一手間も二手間もかけているところに、この宿の "本物" がある。

その "本物" が、部屋の設えやお料理、そして宿のおもてなしすべてに感じられるからこそ、『奈良偲の里 玉翠』は "愉しい" 宿となっているのである。

この先は是非『奈良偲の里 玉翠』に泊って、皆さんそれぞれが、その答え合わせをして頂きたい。

ひとつアドバイスをするとすれば、超早めのチェックインをおすすめする。14：30よりチェックインできるので、とにかく存分にこの『奈良偲の里 玉翠』での滞在を愉しんでもらいたい。

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