秘湯の宿
秘湯とは、主に交通アクセスに難のある山奥の温泉などを指す造語で、1975年4月に「日本秘湯を守る会」を設立した岩木一二三が放った言葉だ。
昭和の高度経済成長期に、高速交通網の整備や近代的設備を備えた魅惑的なホテルの乱立により、旅行スタイルそのものが変化し、その陰で時代の波に乗れず取り残されて行く、設備や収容力が劣り、交通アクセスも悪く、広告宣伝などの集客力にも乏しい山奥の小さな温泉宿を、未来へと残すべく強い思いが籠められた言葉だ。
その根底には、いつの日か再び日本の原風景や日本人の郷愁を駆り立てる旅情などに再び光が当てられる日が来る…という思いがあり、その切なる願いがやがて訪れた温泉ブームとともに花を咲かせ「秘湯」へも目が向くようになり、今日に至っている。