旧大乗院庭園とは?
奈良県奈良市高畑町にある、明治時代に廃寺となった興福寺の門跡寺院だった「大乗院」の庭を、発掘により復元させた池泉回遊式庭園。
1087年に藤原政兼の子 隆禅により創建された大乗院は、1181年の南都焼討を契機に、現在の興福寺別院の定禅院跡に庭ともども移築され、15世紀後半の第20代門跡 尋尊の頃に、相国寺や花の御所などを手掛けた庭師の善阿弥と、銀閣寺の庭園を手掛けたその子らにより庭園を改造。
門主を摂関家や将軍家より迎え、中世には一乗院と並ぶ有力な塔頭だったが、戦国時代より衰退。明治時代の1869年の廃仏毀釈により、九条尚忠の子で最後の門跡 隆芳が、還俗し男爵となったことから廃寺に。
寺の跡地は「奈良ホテル」となり、一時期庭園も姿を消していたが、戦後一部が整備され、1958年に国の名勝に指定。
1994年より奈良文化財研究所による本格的な発掘調査が行われ、門跡 隆温が描いた江戸時代の庭園の様子がよくわかる『大乗院四季真景図』をもとに、2010年の「平城遷都1300年祭」に合わせ復元工事が行われ、現在一般に公開されている。
園内入口には、庭が一望できる休憩所を兼ねた「名勝大乗院庭園文化館」があり、大乗院に関する資料や模型が展示されている。
旧大乗院庭園の見所
国の名勝 旧大乗院庭園
今からはとても想像できないが、廃仏毀釈で廃寺となって以後、一時は奈良ホテルのテニスコートやパターゴルフ場と化していたという庭園。ここまで復元されて本当に良かった。
東屋
池泉回遊式の庭園の一角に建つ東屋。ここから四季を感じながらボーっと眺める庭の景色もまた良い…というか、向きとしてはこちらが正解かと。ならまち近くで大賑わいの市街地ながら、ここだけは時の流れが違う感じだ。
奈良ホテルが借景!?
背後に1909年10月に旧大乗院跡地の一部に建てられた、「西の迎賓館」と言われる奈良ホテルがあり、まるでその意匠が借景となっているかのように庭園にマッチしていて、とても良い感じだ。
往時を偲ぶ貴重な2枚の図
復元にあたり参考とされた、隆温が描いた江戸時代の庭の様子がよくわかる『大乗院四季真景図』と、近年存在が知られるようになったという、西側御殿の詳細が描かれている『大乗院殿境内図』。
名勝大乗院庭園文化館
かつての大乗院を復元した模型や関係資料の展示の他、茶室や会議室も備え、一階の休憩所からは、庭をボーっと眺めることもできる。吹き抜けの空間が落ち着く…
名勝大乗院庭園文化館の築地塀
名勝大乗院庭園文化館の通り側には、雅楽奏者である楽人が住んでいた御所馬場町にあった楽人長屋の土塀をモチーフにしたという築地塀がある。独特のデザインで、近くで見ると実に面白い!
池泉回遊式庭園を歩いてみよう!
必ず外に出て歩き廻り、場所を変え角度を変え楽しもう!背後の奈良ホテルの意匠が良い感じ!
東屋や休憩所からボーっと眺めるのもまた良し!
東屋や名勝大乗院庭園文化館の休憩所で、ゆっくりとした時の流れを楽しもう!
屋外の築地塀にも注目!
雅楽奏者である楽人が住んでいた楽人長屋の意匠をモチーフにした土塀だよ!
旧大乗院庭園 編