不老ふ死温泉と不老不死温泉
青森県西部の深浦海岸から海に突き出た黄金崎の岩礁に、通りがかりのライダーや日帰り入浴客で賑わう、知る人ぞ知るひとつの温泉があります。かつては秘湯として知られた温泉でしたが、テレビや雑誌で話題となり、今や絶景露天風呂の代名詞にもなりつつあるその温泉が、ここ「不老ふ死温泉」です。
不老ふ死という名前が名前だけに、一度聞けば忘れることがないくらいのインパクトがありますが、よく不老不死温泉と混同されます。この黄金崎の温泉は、一般には不老ふ死温泉とされており、不老不死温泉という名称の温泉は、同じ青森県の平舘に存在し、“元祖”不老不死温泉として営業しています。
こちらはこちらで味のある温泉なのですが、不老ふ死温泉人気にあやかってか、最近では平舘も不老ふ死温泉と表記することが多くなっており、ますます混同されやすくなっているようです。
おまけに、この黄金崎の不老ふ死温泉の経営母体が「株式会社 黄金崎不老不死温泉」という名称であることもあって、かなりややこしいことになっているのですが、いずれにせよ数々の雑誌の表紙を飾り、知名度抜群の不老ふ死温泉となっているのは黄金崎の方であり、なぜそうなったのかは、この温泉に一度入ってみれば自ずとわかってきます。
抜群のロケーション
何はともあれ、この不老ふ死温泉の最大の魅力はそのロケーションです。文句なしに五つ星をあげたい、これ以上はないというくらい抜群のロケーションを誇っています。まるで日本海の大海原に浸かっているかのような、そんな錯覚に陥るくらい海に隣接した極上の露天風呂が、この不老ふ死温泉最大の魅力であり、心に残る至福なひと時を味わあせてくれます。
一応男女別々に仕切られたつくりになっている岩風呂は、文字通りの開放感いっぱいの露天風呂なので、海岸を散歩する人や漁をしている漁船からの視線などお構いなしのつくりとなっています。開放的な露天風呂に慣れない方や、特に女性の方は入りづらいかもしれませんが、この温泉の醍醐味はこの開放感でもあるので、ここは頑張って入ってみてください。
この温泉の良さは、実際に湯船に浸からないことにはこれっぽちもわかりませんので、せっかく青森まで来たのですから、是非とも入ってみてください!
ちなみにこの海辺の露天風呂は、近くの不老ふ死温泉旅館の所有物となっており、旅館の許可のもと一般にも日帰り入浴施設として開放されています。人気が出る前は注意看板も目立たず、実際の管理状態もかなりアバウトだったため、有料施設とは知らずに入っている方も多かったようで、そういう私も何も疑わずに入っていた一人でした。
現在では、宿泊客以外は16時以降入れないなど管理もキチンとされているので、ルールを守って入るようにしてください。湯船から夕陽を見たい方は宿泊を!
湯舟の色にビックリ!
この不老ふ死温泉の露天風呂の形は、本当は混浴らしい男湯がひょうたん型で、女湯が丸型となっており、泉質は「含鉄 ナトリウム・マグネシウム-塩化物強塩泉」で、昔で言う食塩鉄泉となっています。
舐めるとちょっとしょっぱい感じがしますが、実際は舐めるのも勇気がいるくらいビックリするお湯で、湯舟の全体が驚くほどの茶褐色で覆われています。鉄泉ならば多少なりとも染まるものですが、これほど見事に茶褐色に染まる湯舟もそうあるものではなく、タオルなどつけたら最後、すぐに茶色に染まってしまいます。
乳白色の白濁した温泉が、温泉らしい!とお思いの方も多いかと思いますが、対極に位置するこのお湯もまた別の意味で温泉らしい温泉と言えます。
私が最初にこの不老ふ死温泉を訪れた時は、それまで無色透明の湯ばかりの旅路だったので、久し振りのこのお湯の歓迎に少々ビックリしましたが、この不老ふ死温泉の湯は最高でした。不老ふ死となる湯かどうかは別として、効能も折り紙つきですので、特に神経痛や腰痛などで悩まれている方は是非お試しあれ。
とびっきりの夕陽にうっとり・・・
この不老ふ死温泉は、日本海の海際に位置する素晴らしいロケーションと、開放感抜群の良質な露天風呂だけでも大満足なのですが、ここにさらにこのロケーションならではの、特上の演出が加わります。それが、露天風呂の先の日本海に沈み行く”とびっきりの夕陽”です。
夕陽を眺めつつの露天風呂は、私の地元である静岡の西伊豆も負けづ劣らずと自負していますが、そんな私でも”とびっきり”と形容したくなるほど、とにかく素晴らしい眺めです。
ロケーション・泉質・夕陽と、まさに三拍子そろった、非の打ち所のない温泉とはこのことで、弘前滞在にも関わらず、わざわざこの不老ふ死温泉の極上の露天風呂からの夕陽を拝みたい一心で、クルマを走らせこの地を訪れたことに人生の幸せを感じました。とんぼ返りで弘前に戻ることとなりましたが、そんな代償を払ってでも入りたくなる魅力がこの不老ふ死温泉にはあります。個人的には未だ人生最良の湯あみであり、今のところロケーションNo1の露天風呂となっています。
冒頭、露天風呂が苦手な方も頑張って入ってみて下さい!と書きましたが、 必ず湯舟に浸かれば入って良かった…と実感できるはずです。とにかく勇気を振り絞って入ってみてください。
海岸から見るのと湯舟から眺める夕陽とでは、見え方以上に気持ちが全く異なります。これを体験せずして、この不老ふ死温泉を後にしたならば、きっと一生後悔することになりますよ!