まさに鶴が舞うような美しさ!
青森県の津軽と言えば、「りんご」と「岩木山」が有名ですが、その岩木山麓の北東に位置する「津軽富士見湖」にかかる芸術的な橋が、この「鶴の舞橋」です。初めてこの名を聞く方も多いかと思いますが、この鶴の舞橋、実は隠れた名橋として知られた橋で、個人的にもかなりお気に入りの橋となっています。
全長約300mのこの橋は、ちょうど100mごとに、約60坪と約25坪の大小2つの休憩所が設けられており、大きく3つのステージに別れた三連の太鼓橋となっています。3つのアーチが織り成すその芸術的な美しさは、名前に負けずすばらしいもので、津軽富士見湖の湖面の輝きと、岩木山麓の自然の造形美がさらにそれらを惹きたてます。
また、それぞれ趣きの異なるつくりとなっているこの橋の休憩所の姿に、この鶴の舞橋の設計者の美意識が感じとれます。細かいことかもしれませんが、普通なら同じ造りでシンメトリーとしがちなところを、あへて変化を持たせているところが心憎く感じられます。
オール木造橋としては、長さ日本一!
総工費2億6000万円をかけこの鶴の舞橋は、青森県産の一等材のヒバをふんだんに使い、丸太約3000本、板材約3000枚にて、1994年7月8日に完成しました。全体的に鶴が翔を広げたようなアーチ橋で、実際に歩いてみると、遠目で見た時よりもかなり反っていることに気付きます。橋脚から柱・梁・・・と、構造体であるはずの木組みが逆に前面に出て強調され、造りこそ単純ですが独特の美しさを放っています。さらに筋交いの斜めのラインと相まって、さらにその美しさが倍増されている感じです。
太鼓橋というと「錦帯橋」などを連想させますが、匠の技こそそこまでは感じられませんが、その優雅さ、伸びやかさ、スケール感では、この鶴の舞橋の方が、個人的には好感の持てる橋となっています。
そんな鶴の舞橋ですが、実は土台から骨組みまですべて木造となっており、単なる木橋としては、静岡県の島田市にある「蓬莱橋」がギネス認定の世界一の長さを誇っていますが、オール木造橋としては、鶴の舞橋が日本一とされています。
ちなみにこの鶴の舞橋があるこの町の名は、鶴田町です。
津軽富士見湖に浮かぶ橋
そんな芸術的な美しさを放つ鶴の舞橋が架かるのが、通称「津軽富士見湖」と呼ばれる「廻堰大溜池」です。津軽の広々としたイメージどおりの雄大な湖で、堤長が4,178mあり、岩木山麓の景色が湖面に映りこみ、自然美がここに集約されています。もともと自然なため池だったものを、江戸時代の1660年に、弘前藩の4代藩主 津軽信政が、用水地として築きあげ、1960年に造成整備され現在の姿となりました。
休日には、散歩や釣りなどを楽しむ人々で賑わいをみせ、そんな光景を見ていると、津軽富士見湖が、地元の方々の憩いの場として親しまれていることがよくわかります。津軽富士こと岩木山を望むことから、津軽富士見湖と呼ばれるようになったのでしょうが、このロケーションとこの美しさは、まさにぴったりのネーミングという感じです。
雪上に舞う、鶴の舞う橋
雪の降る季節となると、この美しい津軽富士見湖の景観が一変します。雪が積もった津軽富士見湖に、舞い降りたかのように浮かび上がる鶴の舞橋の景色がそれです。
一面銀世界の真っ白な湖上に舞うこの橋の姿は、見るもののこころを奪い、それはそれは美しいという言葉しか他に出てこないほど、素晴らしい光景となります。この感動は、目にしたものしか語れないものですので、少々大変ですが冬場にこの地を訪れる機会のある方は、是非とも真冬の鶴の舞橋をご覧になってみてください。
地元の方を除けば、なかなか目にすることがない鶴の舞橋ですが、一見の価値はある美しい橋ですので、是非とも一度訪れてみて下さい。鶴の舞橋だけでも魅力的なうえに、岩木山、津軽富士見湖の雄大な眺め、そして途方もなく高い青空・・・と、とにかくスケール感のある眺めが楽しめますよ!